水族館の猫


水族館の猫

 僕は浜辺にいた。
 別荘近くの小高い砂山に、群青のワンピースを着てサングラスをした若い女が座っているのが見える。股を大きく開いている。下着は見えない。豊かな陰毛が見える。女は僕には気づいていないようだが、まなざしが見えないからわからない。
 立ち止まって女をしばらく眺めたが、女は僕の方を見ず、僕は自分の別荘に向かって歩く。つい一月前、それまで四年一緒に暮らした恋人に別れを告げられ、自分の心を慰めようと、父が使っていたこの南国の別荘に来ていたが、そんな女は初めてだった。それから波を見た。引いては寄せ、寄せては引き続ける波。

作品概要

  • ショートショート。
  • 浜辺と別荘で起きた物語。
  • 原稿用紙10枚。